地域とともに

イベント

2022年2月1日

「未来に向けて」
JRE×大原姉弟クロストーク 第一回

JRE×大原姉弟クロストーク 第一回JRE×大原姉弟クロストーク 第一回

JREで常務執行役員を務める土居聖が、サーフィン&ボディボードというスポーツで世界を舞台に活躍する大原洋人選手と大原沙莉選手と対談を行いました。
「再生可能エネルギーで世界を変える」をミッションとするJREと、日頃から海という自然に携わっているアスリートの二人が、どう交わるのか。
異なった視点から未来を見据える三人の、環境問題に対する考えを伺うクロストーク第一弾です。

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海の環境の変化

土居:

普段、海でサーフィンをしていて、実際に感じられる環境問題はどんなものがありますか?

洋人:

サーフィンしていて一番気づくのは、とにかく海にゴミが多いということ。海が綺麗だったらなぁってしょっちゅう思っています。

沙莉:

地球温暖化が進んでいるのはいろんな原因があるとは思いますが、地球の気温が上がると氷が溶けて、水位が上がりますよね。私が感じるのは、昔と比べると、海岸の面積がどんどん狭くなってきているな、ということです。海岸が狭くなることによって、サーフィンの環境が変わってきています。「昔はもっと波が良かった」っていうのは、サーファーの中では常套句です(笑)。サーファーとしては、そこが一番気になるし、実感するところですね。

洋人:

自分たちが住んでいる千葉県一宮町を例に挙げると、昔はかなり多くのサーフスポットで車の中から波をチェックできたのに、今はそんな場所はほとんどなくなっています。オリンピック会場になった釣ヶ崎海岸はまだ海が見える駐車場があるんですけど、その他の場所はビーチが狭くなって、今まで車を停めていた場所まで波が来るようになってしまいました。
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沙莉:

そういえば、土居さんもサーフィンされると伺いました。

土居:

実は子供の頃からスケートボードをやっていたり、ボディボードをやっていたりしていました。いつかはサーフィンもやりたいと思っていたところ、2年ほど前に高校生の娘がインスタ映えスポットに行きたいと言い出して、鳥居がある釣ヶ崎海岸に行きました。そのとき、波に乗っているサーファーを見て、50歳手前だし、やってみようかなと思ったのがきっかけです。初めてのサーフィンは、知り合いに誘われて茅ヶ崎でやりました。まだ始めて5回くらいですけどね(笑)。今年は本格的にやろうと考えていて、千葉に住んでいるので、どうせなら千葉に行きたいですね。

沙莉:

ぜひ来てください! 一緒にサーフィンしましょう。

土居:

はい。もう少し自信がついてから行きます(笑)。

沙莉:

釣ヶ崎海岸の鳥居がインスタ映えスポットになっているんですね! サーフィンは海底の地形によって波の良し悪しが変わりますが、釣ヶ崎海岸の場合、昔と地形が変化するパターンが違ってきています。どんどん悪いパターンになってきていますよね。

洋人:

土居さんが釣ヶ崎海岸に行かれたときは気づかなかったかもしれませんが、ビーチの左右にコンクリートでできた低い塀があって、その前に消波ブロックが砂浜に埋まっているんです。自分がサーフィン始めた15年以上前は、その消波ブロックの中で遊べるくらい剥き出しになっていましたが、今ではほぼ完全に消波ブロックが砂に覆われて、隠れている状態です。それだけ水位が上がって、波がより内陸までやってくるようになったってことなんだと思います。

沙莉:

自分たちの活動の場を守るためにも、どうにかしなきゃいけないっていう思いがあります。

洋人:

それにはまず自分たちが環境問題に詳しくなって、ああしたい、こうしたらいいってもっと話せるようになりたい。勉強して、知識を蓄えていくことが大事ですよね。
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海の環境問題への取り組み

洋人:

普段入っている海でもマイクロプラスチックのゴミが目立ちます。このマイクロプラスチック問題の解決策としては、どんなことが考えられますか?

土居:

マイクロプラスチックの問題は、海や海岸線で捨てられたプラスチックが原因だと思われがちですが、実際は、その多くは内陸部のゴミが原因なのです。それが川から海に運ばれ、細かく砕かれていきます。また、本当に小さく砕かれたものは風でまた陸上に戻っていってしまいます。それを繰り返して蓄積されていくのです。とても小さいので、いったん海に入るとビーチクリーンをしても回収できず、溜まっていく一方。だから、この問題の抜本的な解決策は、普段からできるだけプラスチックを使わないことしかないですね。皆さんもよく知るところではストローやレジ袋がプラスチックゴミの原因としてありますが、例えば洗顔フォームのスクラブとして使われているビーズにもマイクロプラスチックが入っています。つまり、普段から使う商品を選別するしかないのです。例えばアメリカではプラスチックのマイクロビーズの使用が厳しく制限されているので、消費者がプラスチックを利用した商品を使わないことによって、商品開発している企業がよりエコフレンドリーな商品を作るようになる、そんなサイクルになってきています。最終的には、この問題を市民一人一人が認識して、行動を変えていくための啓蒙活動と教育がキーとなります。ただ、教育だけに任せると、今の子供たちが大人になるまで待たなくてはならないので、みんなが一人一人知識を持って、周りの人に直接話したり、SNSで問題意識を共有したりすることが大事なのかなと思います。
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土居:

お二人に質問ですが、サーフィン業界ではどのような環境問題への取り組みがされているのでしょうか?

沙莉:

昔からやっているのはビーチクリーン活動です。海岸に落ちているゴミを拾うという活動は、いろんな方面で行われています。地元のサーファーが集まって定期的に行うビーチクリーンもそうですし、大会が開催されたときには大会終了時にビーチクリーンをするというのもポピュラーです。あと、サーフボードの廃材やサーフィンの用具の廃材をリサイクルするのも少しずつ普及し始めています。

洋人:

環境活動に意欲的に参加しようとするサーファーは徐々に増えていますけど、もっともっと浸透してほしいなって思いますね。

土居:

お二人は海外でも活動していると思いますが、海外に行って環境問題について気づいたことはありますか?

洋人:

海外でももちろんビーチのゴミ問題とか、プラスチックの問題とかに対する意識が高まっていますけど、なるべく環境に優しいものを使うということに対して日本人よりも気にしていると思います。海外の選手たちの方が知識もありますね。

土居:

ハワイなどに行くと、下水溝のところに、ここから海に流れていくといったような内容の看板があったりしますよね。

洋人:

そうですね。

沙莉:

海外の場合、問題が目に見えてわかるから、自分たちがなんとか止めないと、っていう意識が個人レベルで高いのだと思います。逆に言うと、日本の場合は下水処理のテクノロジーレベルが高いのでしょうね。だからこそ、その問題が見えにくい。でも、プロサーファーなど海に長く携わっている人なら、海の状況が変化していることがわかっているわけだから、そうした問題に対する活動をしやすいと思います。
ビーチのゴミ問題についてお伺いしたのですが、アメリカとかヨーロッパとかの環境問題に対して積極的な国の海は、ゴミが少なくて、ビーチが綺麗に保たれていますけど、日本の場合はビーチにゴミ箱さえない場合がほとんどです。土居さんはなぜこのような差が生まれるのだと思いますか?

土居:

確かに日本は街中も含めてゴミ箱が少ないですね。例えば原宿や新大久保ではゴミ箱がないこともあって、テイクアウト食品のポイ捨てが問題になっていますよね。問題なのは、全員がきちんとゴミを持ち帰りましょうと、一人一人の意識や良心に委ねすぎということだと思います。「日本人は意識が高い」、つまり「ごみ問題はそもそも存在しないはず」を前提に制度設計が決められていることです。例えば京都ではポイ捨ての問題は外国人のせいだ、って言われたりしていましたが、今コロナの状況から外国人はほとんどいませんよね。それでもポイ捨て問題はあまり解決されていません。欧州は環境意識が確かに高いです。ただ、私はアメリカでリサイクルの仕事をしていたのでわかるのですが、一般的なアメリカ人は実はそれほど環境意識が高くないんですよね。もちろん海沿いに住む人達は内陸に住む人と比べて意識が高いことは事実だと思いますし、環境教育に熱心ということもあります。その上で、ごみ問題が存在することを認めて、それを解決するために環境を整備する、という社会の仕組みになっています。
例えば昔住んでいたカリフォルニアのビーチでは、普段から毎朝、ビーチクリーンを行政が行っていましたし、ゴミ箱もかなり整備されていました。日本では、問題があることを認識して、それに対処するための社会の仕組みを整備する考え方も必要だと思います。

沙莉:

それはゴミの分別の仕方や処理の方法も関係してくるのでしょうか?

土居:

日本のゴミの分別は世界トップレベルだと思います。みんなきっちり分けますよね。ペットボトルもきちんと洗って捨てますし。家庭の中ではトップレベルなのですが、外出先で出たゴミは家に持って帰ることが前提になっています。でも、観光地などの場合、ペットボトルは持っていくし、現地でなにか買って食べたりもしますよね。そうなると、そうやって出たゴミを持ち帰れない人も当然出てきて、ポイ捨てに繋がってしまう。そういうことがあるということを認識して、その問題の対策にお金を使わないといけないと思います。日本の社会の場合、政治家や行政側はそこにお金を使うという意識がないですよね。

沙莉:

日本人の国民性を過信しているということですね…。

土居:

日本人は意識が高いのは事実ですし、素晴らしいのですが、それに頼りすぎているというのが正直なところだと思います。
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環境に配慮したものを選ぶ意義

沙莉:

地球温暖化が深刻になったり、海のマイクロプラスチックゴミが海洋生物に悪影響を与えたり、環境に関する問題はさまざまありますが、土居さんは早急に対策が必要な問題はなんだとお考えですか?

土居:

すでに気温は上昇していますし、マイクロプラスチックは増えていく一方なので、優先順位をつけるのは難しいですよね。ただ、ひとつ言えるのは、一人一人が普段の生活を少し工夫していくだけで、大きな効果につながるということ。意識をちょっと変えるだけでいいですし、今日からできることも多いです。
環境問題に関する考え方の一つに3Rがあります。Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の頭文字を取ったものです。日本はリサイクル率が非常に高く、リユースについても水筒を使ったり、シャンプーや洗剤の詰め替えを行ったりして、比較的できているのではないでしょうか。リデュース、つまり削減については、みんながもっと意識して、毎日実践できることだと思います。例えば使い捨ての商品を選ばないということ、そもそも環境に配慮した商品を選ぶことが大事です。サーファーの中でも今は水筒を使う人が増えていますよね。もともと日本には水筒の文化があったわけですが、そういった商品を使うようにすることが環境問題の対策につながってきます。先ほど例に挙げたスクラブの洗顔フォームについても、プラスチックじゃなくて砕いたヤシガラが入った商品をみんなが選ぶようになると、結果的にメーカーが環境に優しい商品開発をすることに繋がり、将来的に環境に配慮した社会に繋がると思います。

沙莉:

私たちが選んで、ニーズを変えていく必要があるわけですね。

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